通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2022年2月号 松本正生 埼玉大学名誉教授に聞く

第49回衆議院選挙総括と岸田政権について
与野党伯仲を望んだ有権者、最後は自民の「地力」価値


――与党としては、マスコミ等の世論調査を受け緊張感を持ち、選挙終盤に引き締めを図り、野党の情勢が高かったような地域でも最後は踏ん張りで勝ち残ったということなのでしょうね。

 そうですね。「危機バネ」が働いたのだと思います。投票日の1週間前(10月24日)に行われた参議院静岡選挙区の補欠選挙で、自民党の候補が敗れたことが一つの引き締め要因、逆バネになったことは間違いありません。野党候補の勝利によって野党の方に流れが行くのかなと思われたましたが、そうではなく自民党側の引き締めの効果のほうが大きかった。静岡補選が一つの潮目になったという気がしています。
(社会調査研究センターがNTTドコモと開発したスマホオンリーのインターネット調査)「dサーベイ」による調査でも、そのことが明白に表れています。例えば、小選挙区投票(予定)候補者を、「公示前」(10月16日~17日)、「中盤」(10月23日~24日)、「投票行動」(10月30日~31日)に分けて調査したのですが、公示前(48%)、中盤(40%)までは多くの有権者が誰に投票するのかを決めかねていました。
 また、小選挙区投票(予定)候補者を支持政党別にみると、自民党は公示前から中盤まで自民支持者を固めきれていなかったのですが、静岡補選後、最終盤の投票行動のところを見ると「危機バネ」が働いたことがよく分かります。
 立憲民主党の敗因の一つは、「支持政党なし」の人たちが自民と立民に割れたことです。静岡補選は「支持政党なし」の約7割が野党に投票しました。地力に劣る立民としては、「支持政党なし」の人たちから圧倒的な支持を得ないと勝ちきれないのですが、自民36%対立民40%でほとんど折半、立民が追い込んだけれども勝ちきれませんでした。