通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2021年6月号 武井孝介東京成徳大学経営学部教授に聞く

日本郵政グループの課題と展望(下)
金融二社の立ち位置を明確にし 郵政グループの一体経営を担保


――地域再生における郵便局の果たす役割ついてお考えをお聞かせください。

 自治体の財政状況がどんどん悪化してきている状況のなか、特に平成の大合併以降、地方部を中心に自治体の職員数はどんどん減らされ、同時に支所や出張所などが縮小の一途を辿っています。自治体の力だけで地域社会が抱える課題を解決したり、地域住民の幅広いニーズ、要望を拾い上げ、住民の福祉の向上を図ることは困難になっていくだろうと考えています。
 自治体と共に地域住民の暮らしを多面的にサポートする役割を郵便局が果たしていくことが期待されていると思います。中山間地等も含めて、有人窓口の特性を持つ郵便局は一番大きな力です。まさに地域の暮らしと安全を、地域の最前線で見ている‟見守り役“のような存在です。そういった地域の郵便局が持っている最大の強みは、実際に人がそこに居ることの安心感であったり、対応してくれることの柔軟性と配慮であったり、AIなど機械では決してマネをすることができない、人間ならではの大きな特性を持っています。近年、地方自治体のなかに郵便局が持っている様々な可能性に着目して、日本郵政グループと包括連携協定を結んだり、あるいは自治体の事務を郵便局に包括的に委託したり、公民連携を積極的に模索する動きが一部で見られるようになってきました。こうした一連の流れは、日本郵政グループにとっても自治体にとっても、あるいは地域住民にとっても非常に望ましいものだと考えています。