通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2021年5月号 武井孝介東京成徳大学経営学部教授に聞く

日本郵政グループの課題と展望(上)
金融二社の立ち位置を明確にし 郵政グループの一体経営を担保


――日本郵政グループの課題と展望についてお聞きします。今後どのようにしたら収益を上げつつ公共性・地域性を発揮することができるのかも含めてお話をいただければと思います。

 日本郵政と金融二社との資本関係、日本郵便と金融二社との長期的な業務の受委託関係がどうなるのかが不明確です。グループ一体経営とユニバーサルサービスの実効的な担保、言ってみれば日本郵政にとっては経営の根幹に関わる部分なわけですが、そこが法律で明確になっていません。会社としても新規業務をはじめ、どういう方向で進んでいくのか、どのような戦略を目指すのか、なかなか打ち出しづらい状況にあると思います。

 日本郵政傘下の日本郵便と金融二社は同じグループの企業でありながら、目指すべき組織目標や目的が本質的に違っています。会社の目的が本質的に異なる一方で、相互依存するという矛盾を抱えているところを、うまくバランスをとってコントロールする。この問題を解決するにはどうしたらよいのかということですが、郵政民営化法等改正法のもとであいまいな経営になっている金融二社の立ち位置を明確化する以外に方法はないのではないかと思っています。
 具体的には、持ち株会社である日本郵政に金融二社の株式の最低三分の一以上を保有することを法律に明記することが現実的な対応としてあるのだろうと思います。そうすれば、日本郵便と金融二社との間の利害対立、利益相反の問題はある程度はクリアできるでしょうし、日本郵政は持ち株会社としてグループ全体の中長期的な成長発展を視野に入れた戦略を立てることもできるでしょう。グループ戦略の立案と経営資源の配分ができ、グループ一体経営が担保できるということです。何よりも重要な点は、金融二社が将来にわたって日本郵政グループ内にとどまることが明らかになれば、過疎地や離島を含む全国の郵便局で郵便、貯金、保険を含めた基本的なサービス、ユニバーサルサービスが維持、確保できる実効性が担保されるところが一番大きいと思っています。