通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2020年12月号 政治評論家 森田実先生に聞く (下)

安倍内閣から菅内閣に 政治の新潮流を読み解く


――今後の内閣に対してご要望がありましたらお願いします。

 改革、改革でこの30、40年、日本の力を弱めてきたことについて、反省してもらいたいのです。だいたい、1980年ぐらいまでは、保健所は数多くありました。草の根の医療の力は相当にあったのです。小さな政府への改革の名目で、政府機関をどんどん減らしました、保健所が少なくなってしまったのです。それとともに、保健所の人間も少ないのです。ほかの国ではPCR検査ができるのに、何故、日本ができないのか、その検査をする場所がないのです。何故かというと、改革の名目で、どんどん潰していったのです。日本人の宝の郵便局まで民営化してしまいました。これをしたのは小泉純一郎内閣でした。どんどん、日本の宝物を潰していったわけです。そのことを、今こそ反省すべきなのです。つまり、1970年代に起こった石油危機の混乱のなかで、サッチャー革命、レーガン革命で新自由主義革命、競争原理至上主義、市場主義、弱肉強食、自分さえ良ければよい思想。この究極がトランプ大統領のアメリカファーストなのです。
 社会というものが成り立つうえで、公(おおやけ)を大事にすることが必要です。つまり、私的利益の追求ではだめなのです。皆で“世のため人のため”を考えてやらなければだめなのだ。こういう哲学が、新自由主義革命のなかで、否定され、自分さえ良ければ良い社会、結局はエゴイズム社会を作ってきたわけです。人間社会にとって、大事なものをどんどん潰していった。今、コロナ禍で、我々が直面している事態を乗り切るためには、皆が世のため人のため、特に公的なものを担当する人たちは、私的利益など追求してはだめなのです。
 この哲学の転換こそが今、求められているのではないでしょうか。菅さんのように秋田の農家から出てきて苦労して、ここまでやってきた人は、世のため人のための原点に返ってもらいたいと思うのです。これを取り戻すことを菅さんはやるべきなのです。