通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2019年9月号 川野祐司 東洋大学経済学部教授に聞く

日本社会におけるキャッシュレス化の進展


 (世界のキャッシュレス化の状況と日本のキャッシュレス化の状況について)

 ヨーロッパでは銀行が積極的にキャッシュレス化を進め、ユーロ19カ国の人々は1枚のデビッドカードで19カ国どこでも支払うことができます。アジアやアフリカではキャッシュレス化がこれまで金融サービスを受けられなかった人々に恩恵をもたらしています。国境を越えて出稼ぎに行く人はより安い手数料で家庭に送金でき、路上販売をしている人々は現金を手元に置かないことでより安全に商売ができるようになりました。
 日本に目を向けてみますと、日本では外国に劣らない最新技術があるものの、人々に使われていないという問題を抱えています。日本のキャッシュレス化は遅れているのではなく、外国に抜かれているのが現状です。
 キャッシュレス化で新しいビジネスが生まれたり、生活の利便性が高まったりしますが、その一方で、使い過ぎてしまうのではないかとの懸念もあります。実際、韓国でクレジットカード政策を実行したところ、成人の一割が破産してしまったというのです。キャッシュレス社会では金融リテラシー教育の重要性が増します。(代表理事を務める)一般社団法人日本キャッシュレス化協会では子供向け金融リテラシー教育、社会人向けマネープラン研修などの教育プログラムを提供することとしており、すでに高校生向けの金融リテラシー教育動画を作成、ホームページにアップしています。
 店舗や自治体に対する情報提供、子供たちあるいは新社会人に対してキャッシュレス社会と付き合うにはどのような地域が必要なのか、そういう啓蒙活動に取り組んでいるところです。