通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2019年1月号 政治評論家・森田実先生に聞く

安倍内閣の政治課題と今後の方向


 実は最近、政治資金パーティーの多さに驚いているのです。何故なのか少し調べてみましたら、ほとんどの国会議員は、今夏の参議院選挙で衆議院との同日選挙をやることが確実という感覚なのです。私は(同日選挙は)五分五分と見ているのですが、国会議員は我々のように客観的な見方ではとても対応できません。もう走り出していますから、パーティーが非常に多いわけです。今夏の参議院選挙と同時期の解散総選挙が十分にあり得ると見ているのです。安倍首相は“ピンチは解散総選挙で乗り切れる”という考え方の人だと思うので、この点でも合致します。つまり、吉田茂型なのです。
 吉田茂は解散総選挙で幾度も難局を乗り切っています。ただ、一度目は「抜き打ち解散」でしたが、二度目は慎重に不信任案の可決を待った節があるのです。不信任案の可決を持って六九条で解散していますから、憲法七条をやたらに使うという考え方ではなかったと思います。その後、これほどまでに解散総選挙を政権維持の武器に使う人はあまりいなかったのではないかと思います。ですから、安倍さんほど解散総選挙を延命に使うことを平然として行う人、それから、厳密に言うと(七条解散は)天皇の国事行為としてやるわけですから、私自身の憲法解釈としては内閣総理大臣たるもの、遠慮がなければいけないと思うのです。
 過去二回目の同日選挙は自民党にとって圧倒的に有利でした。今度、同日選挙をやるとすれば、表面上、野党戦線はバラバラでも内実は固まるのではと私は見ています。自民党側はまとまらないと見ていますから。
 ただ、本当の勝負は統一地方選挙です。これは、地方が崩れてきていますから。結局のところ地方に雇用のチャンスが生まれなければ観光業だけでは、本当の地方の復活はないわけです。もう一つは国の政策(現状は中央集権)を根本的に変えなければ、根本の方向が弱肉強食、競争至上主義、勝った人間が強い状況と、大都会への集中が進むのです。この流れを跳ね返さないと、日本は終わってしまいます。