通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2018年4月号 東京大学名誉教授・月尾嘉男先生

郵便制度創設150年を契機に
巨大な方向転換を期待


 情報通信技術の急激な進歩と浸透は社会に激変をもたらしている。将棋や囲碁で人間の名人を次々と打破する、有名画家の作品と区別のつかない絵画を作成する、群衆のなかから特定の人間を一瞬で発見する、多数の言語を流暢に翻訳する、犯罪の発生時刻と場所を推定し警官に指示するなど、人間の能力を凌駕する情報技術が次々と登場し、コンピューターの計算能力に人間が対抗できないという時代とは様相が一変している。
 この影響は金融・証券業界にも飛火している。
 現在、世界では数千の、日本でも数百の地域通貨が発行され、すべてが成功とはいえないものの、地域の商業活動の発展だけではなく愛郷精神の育成に貢献しているものが多数ある。現状では国家からの干渉もない。この地域通貨には管理する事務作業が必要であるが、全国に存在する2万の郵便局が地域通貨の運営拠点になることは、経済利益にはならないものの地域活動のワンスップ拠点として貢献することは可能である。
 今年は明治150年であるが、2020年は「郵便」という名称を発案した前島密が郵便制度を建議してから150年、翌年は東京・京都・大阪に郵便役所が創設されて150年の節目になる。さらに現在、地域分権、地域創生が推進され、明治維新以来の中央集権制度が方向転換しつつある。各地に2万以上の拠点を維持する日本郵政グループが地域をキーワードとする日本の転換の主役を目指すことを期待する。