通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2017年3月号 東京大学名誉教授・月尾嘉男先生に聞く

地方創生と郵便局の今後の在り方・役割等について(上)
地域の“コンシェルジュ”としての期待
モノの輸送からサービスへの提供へ軸足移す必要も


 平成30年は明治維新150年に当たり、政府も日本の節目として記念事業を検討しています。日本全体としての“重要な転機”として考えるべきだと思います。近代日本は明治維新で誕生しましたが、それは鎖国から開国、三百諸藩の分権統治から明治政府の集権統治など巨大な転換でした。その結果、日本は世界有数の大国になりましたが、150年が経過した現在の社会を見ると、この明治維新が創り出した近代日本の制度や実態の多くが破綻していると思います。たとえば、人口は明治維新から今日まで3.7倍に増えましたが、ここにきて減り始めています。また、中央集権国家の体制に様々な弊害が出てきています。この中央と地方の対立の構図を維持したままま地方創生を目指している現状が適切かどうかも疑問です。
 近代国家が制度疲労を起こした原因は多数ありますが、最大の原因はICT(情報通信技術)による情報革命だと思います。明治時代に日本が目指した革命は欧米諸国が先行していた産業革命を導入して工業国家を発展させることでしたが、100年以上が経過した時期に情報革命が登場しました。その原動力であるICTが社会の基本を一気に変えました。
 明治維新と前後して誕生した郵便制度も近代国家が制度疲労に直面しているのと同様に、巨大な転換点に直面していると考え、これからの100年、150年を目指して目標の転換を研究すべき時機だと思います。