通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2016年12月号 前内閣官房郵政民営化推進室長・郵政民営化委員会事務局長

利根川一氏に聞く(下)
郵政民営化委員会の役割・「意見」・「所見」・「地域社会と郵便局の関係」等々


――ゆうちょ銀行が千三百万円、かんぽ生命保険が基本契約はそのままで加入限度額が最大二千万円まで引き上げたということですが、意見の対立点はございましたか。

利根川 議論の軸(視点)は決まっていたので、これに照らしてどういう形で決着をさせるのかが論理的に適切なのかということになるのですが、それについてはかなり議論しました。保険の場合、解約すると、契約者が損することさえあり、会社間の資金移動は想定しにくいのですが、預貯金の場合、いわゆる資金シフトのハードルはあまり高くないわけで、そこをどう考えるべきかについて慎重に議論しました。結局、やってみなければ分からないのでは?との意見は消えないので、規制緩和後の状況を見極めながら、あるいは、この会社(ゆうちょ銀行)は健全な経営ができるという姿勢を見せてもらいながら、一歩一歩緩和を進めていくのがよいのではないかという考えに至りました。規制の仕方について預金種類別に考えるという議論もあったのですが、民営化後の初めての緩和は、多くの方々のニーズに応えられる単純な引上げの方がよいとの結論になりました。その際の具体的な引上げ額については、一気に高く引き上げると失敗した場合の影響が大きい、かといって、低すぎると影響の程度が見えにくい、その間をとろうということで、三百万円という金額が出てきました。委員長も会見の時に触れておられましたが、国家公務員の給与や年末賞与にNISA(少額投資非課税制度)を足すと二百数十万円になります。というわけで、三百万円あれば、庶民が多少の資金を動かす際の受け皿として機能し得る、退職金などを考えればもちろん十分な額とはいえませんが、最初のステップとしてはそれなりの水準なのではないかと判断しました。