通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2016年7月号 評論家 森田実先生に聞く

世界の経済社会情勢と我が国を取り巻く政治情勢(上)
郵便局を日本の主柱、地域の主柱へ


 選挙権年齢の引き下げは二面性を持っていると思う。若い人たちのエネルギーや意識が政治の中に入ってくるのは、政治に対してプラスの効果を与えるものだと思う。他方、日本においてはきちんとした青少年教育がなされておらず、この悪影響も考慮しなければならない。この悪影響を最小化しつつ若い人たちのエネルギーが政治の中に入ってくる道をきちっとつくることができるかどうか、ここに大きな課題がある。
 若い人たちに対する社会教育、政治教育をしっかりしなくてはいけないという動きには期待をしたいが、そうした動きは不十分である。
 私は、結局のところ社会の組織の力が低下してきたところに大きな問題点があると思っている。社会というのは政治や行政だけでなく、諸々の組織によって支えられている。私は昭和七年生まれで、戦争が終わった時は中学生だった。出身地は静岡県の伊東であるが、何かあった時にどこに相談にいくか、どこを頼りにするかと言えば、大体において三つだった。校長先生、警察署長、そして郵便局長。そうした日本の社会の柱が戦後、特に新自由主義の導入以来、弱体化したのではないかと思っている。大切なことは人間がつくる諸々の社会組織の力を強めていくことだ。その力によって若い人たちが社会教育、政治教育を受けられるようにしていくのが基本ではないか。選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられたのを機に、我々は若い人たちのことをもっと真剣に考え、社会教育や政治教育を受けることができるような環境を整えるべきではないかと思っている。とくに大事なのは街の郵便局だと思う。