通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2014年12月号 ICT時代を迎えた日本の将来像について(下)
           ~郵政、国家のあり方~

元衆議院議員・一般社団法人通信研究会会長 亀井久興先生  
東京大学名誉教授 月尾嘉男先生


亀井先生 郵政民営化の問題は、アメリカが金融二社を独立させて、その株式の取得を狙っていたことは明白でしたが、そのことよりも私が大きな危機感を持っていたのは、地方の衰退に拍車をかけることにならないかということでした。地方では、市町村の合併や学校の統合・廃校が進み、病院や農協、漁協も統合されてきました。そうした中で辛うじて郵便局だけが地域に存在していて、地域の人たちに長年利用され愛されてきている。したがってそこには地域住民と郵便局の信頼関係が定着しています。

 今、地方の衰退を見るにつけ、このうえ地方から郵便局がどんどん撤退したら、ますます地方の疲弊に拍車をかけることにならないかと危機感を持っています。むしろ、地域社会の中で郵便局は今後何をなすべきか、また、新しい収益をどのような事業でつくり出していくかが、今後の最も大きなテーマではないかと思います。

月尾先生 銀行は経営の効率化で支店を統廃合し、その数は急速に減少しています。自治体も支所を統廃合し窓口が減少しています。そのような状況の中で郵便局は現在でも二万四千の拠点を維持しています。

 私はカヌーやクロスカントリースキーのために山奥に行くことが多いのですが、そういう地域の生活の拠点になっているのは郵便局です。北海道の雪深い山奥の集落で私の友人が郵便局長をしています。そこでは郵便はもちろん、金銭の出し入れも扱っており、集落の人たちとの交流拠点にもなっています。郵便局が無くなれば、お年寄りは本当に困ってしまいますから、郵便局を維持することは極めて大切なことです。