通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2014年9月号 対談 世界の経済社会情勢と郵便局の在り方を語る(上) 
              ~郵便局は社会のインフラであり日本の文化~

評論家 森田 実先生  衆議院議員 城内 実先生


森田先生 日本の地域社会というのは、それぞれの家庭と地域の絆が基盤になり、学校、警察、郵便局などの公的なものによって支えられてきました。小泉・竹中改革は、この地域社会の支柱の根っ子を引き抜いてしまおうと、乱暴なことをやった。私はあの当時、そこまでやるのかという想いが強かったのです。というのも、アメリカの保険業界が日本の保険業界、それも郵便局の簡易保険に的を絞った。簡易保険を米国保険業界の支配下におくためには、まず日本国民を洗脳しなければならないとの考えに立ってまず広告を支配した。これによってマスコミを支配しました。今だけ勝てばよいとの考えで、衆議院を解散し、郵政選挙をやり大勝した。

 そういう乱暴なことをやったがために、日本の地域社会の大事な根の一つである郵便局が枯れそうな状況になったのです。ところが、「どっこい生きている」という強さが日本にはある。戦後、焼け野原になり占領下におかれるという逆境にあっても新しい芽を出す力を持っていた。だから、郵便局の人たちの懸命な努力もあって、決して沈まない。

城内先生 本来、日本は共存共栄型社会で、ヨーロッパもそうですが、小さなコミュニティがあり、そこでは地域の言語、歴史、文化と自然を大事にしながら生活をしてきました。ところが、戦後の日本はアメリカナイズされ、巨大資本が大型店舗を出し、そのためにかつての商店街は軒並みシャッター街に化した。ヨーロッパはどうかというと、昔ながらのコミュニティが存在し、パン屋さんや肉屋さんなどは街の中心部に何百年前からあって、大型ショッピングセンターは郊外にという形できちっとすみ分けができているのです。ドイツでは閉店法という規制があり、日曜日の営業は基本的にはできなくなっています。ところが、日本では規制緩和で大型店舗が街中に入ってきて、損得勘定で儲けが出なければさっさと撤退してしまう。結局、お年寄りが歩いて行ける店が無くなってしまうのです。日本もヨーロッパ型のコミュニティをもう一度見直していくべきです。