通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2013年1月号 新春特別対談 日本のあるべき姿
――科学技術の進歩が明日の日本社会、 経済にどのような影響を与えるのか――

社団法人逓信研究会会長 元衆議院議員 亀井久興先生
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長 東京大学教授 坂村健先生


亀井先生 政治が国の目指す方向を示し、国民のコンセンサスを得るわけでもなく、国民はバラバラになっている。東日本大震災の時に「絆」という言葉が大事にされました。確かに人間同士の絆、家族の絆は今でも大事にしていると思います。ところが電車に乗ると、若者の多くはメールやゲームをやっていて、同じ電車に乗っていても自分だけの世界にいる。自分の世界を持つことはそれなりに良い事があるのでしょうが、お互いを尊重し合えるような空気がどんどん希薄になってきて、なんか怖い感じがします。しかも、親が子を殺したり、子が親を殺すといった犯罪が起きている。日本人はお互いを尊敬し合うという独特の精神文化を持っており、そのことに自信と誇りを持って国際社会に発信していくべきだと思います。

坂村先生 今はいろいろなことを考えなければいけない時代です。その中で科学技術もワン・オブ・ゼムというか、一つの重要なファクターであることは間違いありません。残念なことに科学技術を理解している人は少ないのですが、理解しようとする心は持ってほしいですね。理解しようとする心、人間関係でも親子関係にも大切なこと。科学技術についてもコミュニケーションをとり、理解しようとする心、気持ちが大事だと思います。その意味で科学技術をやっている者としてもっと情報を発信しなければいけないと、今日は強く感じました。

 日本はどうあるべきかといった時、日本の国全体をドラマチックに変えるのではないにしても、時代は進化しているわけですから、日本人の良いところ、伝統文化を守りながら、時代の変化についていくことが大切だと思います。敢えて言えば、スピードが遅いのが問題でしょう。あまりスピードが遅いと世界に取り残されてしまう。もうちょっとスピードをあげましょうと言いたいですね。