通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2012年12月号 対談 城内 実・衆議院議員&関岡英之・拓殖大学客員教授

TPP参加への警鐘(上)
アメリカの思惑で、日本が、郵政が壊される


城内先生 世間一般では、農業対輸出産業、農協対経団連、あるいは保護主義対自由主義貿易といった対立構図だけが描かれている。ところが、これはまさに郵政民営化と同じで、マスコミは抵抗勢力の郵政族対民営化推進の改革派みたいな構図に単純化し、多くの人たちには、「俺たちには関係ない。むしろ民営化した方が国民にとってメリットがあるのではないか」と思わせた。

 このTPP問題は、国民の生活に大きく関わる問題であることを、まず心にとめてほしい。一番のポイントは、TPPは協定、いわゆる国と国との約束事であり、一旦TPPに参加してしまえば、あらゆる国内法規に優先することになる。これは当然のことで、国と国とが約束したあとになって、いや我が国の法律ではそれはできませんとは言えない。一般的に先進国であれば、条約、協定は国内法に優先する。改正郵政民営化法が通って喜んでいられるのも束の間、ぬか喜びになるかもしれない。もしTPPに参加すれば、その法律は白紙にされ、もっと民営化して株を売れ、アメリカ資本でやればいい、保険はアメリカに全部任せろという話になるのは必定である。

関岡先生 TPPと郵政との関係は新聞でも報道されているように、日米の事前協議に際し、アメリカ側の条件として明白に提示されている。アメリカは簡易保険、牛肉、自動車という三条件を出してきた。TPPが郵政、とりわけ簡保と直結する問題であることはアメリカ自身がそれをはっきりと表明している。なぜここで簡保が出てくるのかというと、今年四月に改正郵政民営化法が成立したことに起因している。

 小泉政権時代に強行された郵政民営化が「見直された」ことで困っている人はいない。少なくとも国民レベルで怒っている人はまずいない。郵政民営化法が改正されて一番困っているのは日本国民ではなく、アメリカだということだ。USTR(米国通商代表部)代表のロナルド・カーク氏は改正郵政民営化法について、「開放すると約束した市場からアメリカを締め出すことになる」と懸念を表明している。この発言が奇しくも城内先生が七年前に政治生命をかけて阻止しようとした、小泉・竹中政権による郵政民営化の本質をついている。要するに、保険という一つの分野をマーケットとしてアメリカに開放する、ただそれだけのことで、日本の経済、国益とは何も関係のないことだったのだ。アメリカの金融資本、つまり、ウォール・ストリートのための郵政民営化だった