通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2025年1月号 金井 利之 東京大学大学院法学政治学研究科教授

大切なのは人が減っていくプロセスへの対応
郵便局は最後の情報を確実に届ける基盤


 全体の人口が減る中で(近隣の自治体と)人の奪い合いをしたら、ますます愚かな帰結になるだけです。結果として東京と東京周辺では人口が増えているところはあるわけです。でも、マクロ的にみればナンセンスな話で「あなたのところだけ増えたって、ほかが焼け野原では仕方ないでしょ」という話です。本来は、そこから先のビジョンを、日本社会全体で考えていかなければいけないわけです。
 今後、ますます地方圏の人口も減ります。ただ、人口が減って「何が問題なのか?」を突き詰めたとき、地方圏の方がむしろソフトランディング(軟着陸)するための対策を取ってきています。

 【郵便局への期待】
 郵便事業は単なる宅配事業ではありません。訴状・内容証明・催告書・督促書などの大事な書類を送るというのは、単なる紙を送っているわけではありません。最後の情報を確実に届けるというのは、インターネットのプロバイダーや宅配事業者はやってくれません。その本当の基盤を支えていたにもかかわらず、それが民営化・分社化によって徐々に壊れはじめていて、今ギリギリ保たれている状態だと思います。自治体は市町村合併してきめ細やかなサービスが難しくなり、農協も旧町村・市町村単位から撤退しています。なので、公共サービスを市町村がやるなら交付税で支えるしかないですし、郵便局がやるならば本来は国営に戻すべきだと思いますし、郵便料金値上げではなく、少なくとも財政支援が必要でしょう。