通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2024年9月号 原田  謙 実践女子大学人間社会学部教授

地域や職場でエイジフリー社会をどう構築するか
「共創」のもと、郵便局ならではの資源の活用を


 人間関係というと、とかくポジティブな側面が取り上げられますが、ネガティブな面があるということです。職場でも地域でも、「頼りになる人」「助けてくれる人」「一緒に話していてホッとする人」がいます。逆に、高齢者であろうが若者であろうが「ちょっとイライラさせられる人」とか、職場関係でもいろいろありますよね。意外にポジティブな関係よりもネガティブな関係のほうが、幸福感に与える影響が強いといわれています。ですから、幸福感とはいかに「つながり」を増やすかという視点ではなく、いかに否定的な「しがらみ」を減らすかがカギとなります。
 高齢者の幸福感の研究をしていると、「近隣関係を増やしましょう」「高齢になっても新しい友人関係を増やしましょう」という話になりがちです。もちろん一定程度重要なことですが、ネガティブな人間関係をどうするかがより重要です。

 【郵便局への期待】
 郵便局は150年を超える歴史があります。旧特定郵便局は自分の土地や家屋を提供し、その歴史は事業だけにとどまらず、家族の歴史、さらには地域の歴史を反映していると言えるのではないでしょうか。私は団塊ジュニア世代ですが、郵便局の記憶はとても強くあります。なぜかと言うと、母が記念切手を集めていて、発売日には郵便局に並んで買い求めていたからです。このように個人レベルの記憶、世代間の記憶、いろいろな記憶を反映している場所が郵便局なのだと思います。日本郵政グループがキーワードに掲げている「共創」の理念のもと、郵便局ならではの貴重な資源をどううまく活かしていくか、これからの展開に期待しています。