通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2023年11月号 前野隆司 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネ
               ジメント(SDM)研究科教授

全体の「幸せ」を第一に考える組織づくり
郵便局は人と人とのつながりを担う場に


 人間は放って置くと「部分」だけを見てしまう。安全管理のための100のチェクリストのようなものがありますが、チェックだけで疲れてしまいます。安全に仕事をするためのチェックなのですから、「安全に仕事をしましょう!」とだけ伝えておけばよいのに、「100個チェックをしてください」となると全体のことを考えなくなります。幸せ(ウェルビーイング)とは自分が良い状態であることですから、安全とか環境問題、あるいはSDGsと一緒で、大きな視点で捉えることにつながります。激動の時代に「部分」だけを見ていたらそれこそ流されてしまいます。
 これからの時代に求められる組織は、「幸せ(ウェルビーイング)な組織」、個人か集団に偏るのではなく、「個人の幸せ」と「皆の幸せ」のどちらも大切にする「ウェルビーイング第一主義」(幸せファースト)です。今自分は幸せだろうか、周りの人は幸せだろうかというのは、だれでも考えられるわけですが、それをつい怠って、目の前のことだけを真面目にやっていると実は幸せに向かいにくい。全体の幸せを考えることを思い出してほしいですね。

 【郵便局への期待】
 郵便局は元々、地元の名士が局長を務めておられたケースが少なくありませんので、郵政事業を通して人と人とのつながりを大切にしている、人脈の豊かな人が多いと思います。単に、郵便・貯金・保険の事業だけではなく、郵便局は人と人とのつながりを担う場だと拡大解釈していただくと、何かやるべきことが見えてくるのではないかと思います。コンビニエンスストアにばかり人が集まるのではなく、郵便局や役場、学校、図書館、お寺、神社など、昔からある良い場所で人々がもっと交流するにはどうしたらよいか。これからの時代、大きな可能性を秘めている場の一つが郵便局だと思います。