通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2023年9月号 河藤佳彦 専修大学経済学部教授

地域経済再生へ「地域資源」を有効活用
郵便局には「ソーシャルビジネス」の役割を


 「地方創生」が国の重要な政策課題として位置付けられ、地域産業の振興についても様々な取り組みが行われています。しかし、多様な地域産業の振興を国が一律の政策により実現することは困難です。そこで、地域が主体性を持って地域産業振興に取り組む実力を持つことが重要となります。
 独自性の高い地域産業の発展は、地域の経済的自立と内発的発展を促進してくれます。近年、各地の自治体において、中小企業振興条例の制定や地域産業の関係諸主体が協働して政策提言を行う産業振興会議、中小企業の諸課題に関する助言や情報提供を行う中小企業サポートセンターの設立など、政策実施の仕組みづくりが進んでいます。地域産業と密接な取引や連携関係を構築し地域に経済波及効果を創出できる、戦略的な企業誘致も重要です。

 【郵便局への期待】
 郵便局の特性は、公共性の高い機関であり、社会貢献、地域貢献が求められることです。一方で郵便局は、自律的な事業継続のための収益性が求められる事業体です。また、地域経済活性化の見地から注目すべき郵便局の特性・優位性は、都市部から地方部の過疎地域まで幅広い地域に郵便局が立地し、配達網が整備されていることであると思います。郵便局の特性を踏まえつつ、郵便局が社会貢献・地域貢献を積極的に果たしていくための有効性の高い一つの方策が、郵便局を「社会的価値創造企業」、すなわち「ソーシャルビジネス」「コミュニティビジネス」として捉えることだと考えます。