通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2023年3月号 大杉 覚 東京都立大学法学部教授

過疎・過密から、躍動する「適疎・適密」社会へ
郵便局は現場に携わっている強みを活かすべき


 国や地方を通じた地方創生の取り組みが進められてきましたが、「都市と地方」問題や東京一極集中問題などの構造問題を抜本的に転換する動きにまでは至っていません。従来からの過疎・過密問題はかたちを変えて存続し、むしろ、問題状況は先鋭化してきたのではないかと見ています。
 コロナ禍を乗り越えた先(beyondコロナ)の「新しい日常」に求められる社会として、どのような立場にあっても孤立して誰一人取り残されず、かといって、過度に人口や社会活動が集中してギスギスしない社会、豊かで創造的な暮らしが可能な程度に、適度に人と人とのつながり・交流が確保された暮らし心地の良い社会、いわば「適疎・適密」社会への転換を考えていくべきです。

 【郵便局への期待】
 郵便局は、公共的な組織として地域住民の最も身近なところにある、現場に直接関わる組織です。私は自治体の研究者ですが、自治体のことを話す時に「市町村の住民に一番身近な行政はどういう性格を持っているか」、四つの性格を挙げます。一つは「身近さ」「近接性」、二つめは「現場性」、三つめは「透明性」「公開性」、四つめは「先端性」です。中でも現場性が大事です。「身近さ」はもちろん大前提なのですが、現場に携わっている強みを郵政事業、郵便局に今後どう活かしていけるのかが大事なことだと思います。