通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2022年12月号 嵩 和雄 國學院大學観光まちづくり学部地域マネジメント研究センター准教授

交流から移住・定住へ 段階踏んで受け入れ
郵便局は地域と移住者との“接点”の役割を


 良くも悪くも「地方創生」が掛け声になって、農村側が移住者を受け入れる意識はかなり強くなったと思います。課題としては、本来であれば都市農村交流を行い、地域の機運を醸成し、体制を整備したうえで移住者を受け入れるというように幾つかの段階を踏んでいく必要があると思うのですが、地方創生政策によって、いきなり「移住してくれたら補助金を出します」というかたちで条件整備をして移住者を呼び込もうとしたのは少々残念です。地域の魅力を高め、人口を維持するためには、よそから人を呼ぶだけではなく、住んでいる人たちが主体的に住み続けられるようにしなくてはいけません。自分たちの子どもが戻ってこないような地域に、よそから来てくれと言うのは少し違うと思います。

 【郵便局への期待】
 地域と移住者の‟接点“の役割を果たせるのではないかと思うのです。郵便配達の人が毎日地域をくまなく見てくれています。地方で親が一人で暮らし、子どもは東京で暮らしているようなケースでは、郵便局の方たちが日々の業務を通じて見守ってくれているという安心感があります。そういったところに郵便局の可能性があるのではないかという気がします。学生時代に山口県須佐地域に行った時のことですが、郵便局のバイクに消火器を積んで配達していました。火災を発見した時にすぐに消火活動ができるからだというのです。いわゆる安全保障ではないけれど、郵便局の持っている「安心・安全」の役割に大いに期待をしています。