通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年10月号 大谷基道 獨協大学法学部総合政策学科教授

人的資源をいかに活用するかが地方創生の鍵
郵便局を地域人材の交流拠点に


 いま自治体は極限まで人員を削減した状況にあります。2005年に国主導で各自治体が集中改革プランを策定したのですが、同プランの中でその後5年間の定員削減の目標値を公表したのです。それを達成するため、「乾いた雑巾を絞る」と言われたほどの厳しい定員削減を行った結果、人員の余裕が全くなくなりました。東日本大震災が発生したのはまさにその頃です。被災地に応援の職員を出すにも、人員の確保が難しい状態でした。いまコロナ禍で繁忙を極める保健所も当時人員削減の対象であり、現在の厳しい状況につながった部分もあります。地方創生を進める上では、少ない人的リソースでいかにして進めるのかも重要なポイントになっています。無い袖は振れませんので、内部リソースが足りなければ、外部の人の手を借りなくてはなりません。最近ではいくつかの自治体で、民間の専門人材を兼業・副業的な勤務形態で採用する自治体が出てきています。今後、外部のリソースをいかにうまく活用できるかが鍵になるでしょう。

(郵便局への期待について)ユニバーサルサービスを提供する郵便局の存在は既に必要不可欠ですが、今後は地域で活躍している人同士を繋げる支援などを行うことで、さらに存在価値が高まるのではないでしょうか。地方には金融機関が郵便局だけという地域も多く、生活インフラの一つと言われています。そこを一歩進んで、自治体などと協力し、地域資源の掘り起こし、地域の情報を運ぶのも郵便局の一つの役割だと考えています。つまり、これまで担ってきたカネやモノの流通・媒介だけではなく、地域に精通しているのであれば、地域情報の媒介役も担えるのではないかということです。
 最近はコンビニを併設する郵便局も見られますが、郵便局は地域の人々が集まる交流拠点としての役割も果たしうると思います。例えば、コロナ禍を契機にテレワークの導入が進んでいますが、一人になれるスペースがなかったり、あるいはオンライン環境が整っていなかったり、家ではなかなか仕事が出来ない人がいます。郵便局のスペースに余裕があれば、サテライト・オフィスに使えるようなブースの貸し出しもできるとよいと思います。そこに人の交流が生まれ、郵便局が持つ地域情報をうまく提供すれば、新たな地方創生のシーズが生まれるかもしれません。今のような時代こそ、郵便局の果たす役割がますます大事になっていると思います。