通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年9月号 山本尚史 拓殖大学政経学部教授

“エコノミックガーデニング”で地域経済を活性化
郵便局「発」の信頼性が新たなブランドに


 私の研究の中心である「エコノミックガーデニング」とは、「進取の精神が旺盛で価値を生み出す中小企業が長生きして繫栄するように、ビジネス環境をテーラーメードで構築する」ことです。もともとは1980年代に米国のコロラド州リトルトン市で初めて実施されました。その後、試行錯誤を繰り返しながら、15年間で雇用を2倍、税収3倍を実現しました。こうした成果が注目を浴びている地域経済活性化策で、現在は全米の多くの都市やオーストラリアの都市へと広がっています。この手法は、企業誘致だけに頼るのではなく、地域の中小企業が成長することによる地域経済活性化を目指すもので、そのために行政や経済団体、銀行などが連携しながら、地元の中小企業が活動しやすく、成長できるようなビジネス環境をつくるための施策を展開します。

 山武市のエコノミックガーデニング協議会には、市内の郵便局全部がメンバーに入っているのです。これは多分、珍しいのではないでしょうか。
 今後の郵便局への期待ですが、大都市では郵便局の有難みはさほど感じないのですが地方では存在感が大きいのです。郵便局があるおかけで地域のコミュニケーションが成り立つということは間違いなくあると思います。その意味では、郵便局長さんは地域のキーパーソンであり、ローカルプライドの要だと思います。
 郵便局は、この地域の、この土地の、この風景のこれが良いというのを発信できるのではないでしょうか。さらに、SNSなどで発信する時に、郵便局発信となれば、別に商売とは関係がなく純粋に良いものだろうと感じるのです。しかも信頼性があります。ビジネスと公共性とによる微妙な位置づけが重要になってくるのです。そこで、郵便局「発」が何らかのブランドになるかもしれません。