通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年8月号 浦崎太郎 大正大学地域創生学部教授

「地域・高校・大学」連携で 地域の担い手を育成
郵便局を子どもたちや若者の地域探究の拠点に


 高校生の地域参加を促すには、それを阻んでいる要因を理解しておく必要があります。一つは、人づくりに対する地域の当事者性不足。もう一つは高校や保護者に今なお根強くはびこる現役国公立大学至上主義です。このうち後者は、高校が「国公立は学費が安いから」「努力を重ねてきたものが集うので切磋琢磨できるから」と、強力に指導している場合も多い。となれば、それを上回るメリットを享受できる仕組みを構築できればよい。それには「高校と地域の連携」に「高大接続」を加えた三者連携が有効と考えられます。まず、地域(市町村)が地域課題を解決するために大学の専門性やマンパワーを導入し、その現場に高校生を迎えれば、高校生は地域や大学についてより深く学ぶことができ、自身の進路を地域の将来と重ねて描くものも現れます。そうした高校生は地元に貢献する人物に育つ可能性が高いので、地域は学費補助などの形で支援します。大学はその高校生を特待生的な待遇で迎えて鍛えます。こうすれば、私立大学でも国公立大学より安い学費を実現することができます。
 以上、高校時代に安心して地域に関わることができ、大学進学後には種々の恩恵を享受できる若者もプラス、地域貢献を通して向学心に燃えた学生を獲得できる大学もプラス、何より、能力を高めた若者が回帰してくる地域もプラス、三方よしの仕組みが実現するわけです。

 全国津々浦々にある郵便局は、地域にとってものすごく大事な拠点であると思っています。地域の人たちが子どもたちに関わろうと思っても、学校に行くのはハードルが高く感じてしまう。子どもにとって本当に大事なのは、身近にいるおじさんやおばさん、おじいさんやおばあさんが温かい視線で見守ってくれたり、褒めてくれることです。そういう人たちが集まる場所が郵便局だと思うのです。郵便局は地域の中で一定のステータスを持っていますので、郵便局からの情報発信となると信頼性が他の機関とは全く違うわけです。

 全国に隈なくある郵便局が子どもたちや若者を応援する拠点の一つになってもらえると、大変嬉しいと思います。郵便局は人々の暮らしの中に完全に根を張っています。郵便局の皆さんが地域コミュニティのつなぎ役となって、子どもを守り、コミュニティ形成も担っていただけるとありがたいですね。