通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年6月号 鈴木 誠 愛知大学地域連携室長・地域政策学部教授

地域協働によって地方創生に向けた環境づくりを
郵便局は住民の生活に寄り添う「命のインフラ」


 (政府の地方創生政策によって)三大都市圏以外の地方の人口減少が進む中で、人口の長期見通しを把握しながら、人口の減少を少しでも減速させる方法を考えたり、あるいは空き家等を有効に活用して移住・定住促進を図り、まち全体では難しいけれども、可能な地域において人口増加を図っていくという方策を探っていく。また、人口減少が進むことを共通認識として、市民も行政も企業も一体となって、その人口減を極力抑え、あわせて子育てしやすい環境や若い世代が働き続けられるような環境をつくっていく。人口減を減速させていく施策を、いわゆる地域協働で編み出していくきっかけにはなったと思います。
 それまでは、人口減少を食い止めるためには、民間は民間、行政は行政、企業は企業、バラバラという印象もありました。行政の中でも、例えば、企画部門や産業振興部門も認識が別々でした。企業誘致をする部門では、企業を誘致し働く世代を多く迎えられるようにすることで、住宅も整備され、子どもたちが生まれる環境も出来ていくといった認識を持ち、そういうロジックは常に各部署の施策に伴って言われることがありました。住民の側も、住宅を整備すれば人口増につながるといったニュアンスで、どちらかと言えば場当たり的な話がずいぶんありました。でも、そうではないのだということを市民も行政も企業も認識し、まさに協働で考えていく出発点を得ることができたのは地方創生政策が一つのきっかけになったと思います。

 郵便局はものすごく大事だと思っています。郵便局がなければお年寄りをはじめ、人が住めなくなるのです。郵便の受け取りや差し出し、年金の受け取り、貯金、保険といった様々な生活の基盤を担っています。いわば住民の生活に寄り添う「命のインフラ」と言ってもよいでしょう。人が生まれてから亡くなるまでの間の人間としての生活を持続させるうえでの極めて重要なインフラです。郵政の改革や行政の合理化が言われる中で、そこのところは再編、縮小をしてほしくない。郵便局がなくなってしまうと、人が地域社会の中で生活を続ける基盤を失うことになるわけです。