通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2020年7月号 岩崎由美子 福島大学行政政策学類教授に聞く

“住民主体の地域づくり”が重要
過疎集落でも郵便局員は頻繁に来訪


 人口減少社会において、従来の枠組みや価値観を超えた新たな生き方・暮らし方を発信する場として、過疎地域の持つ可能性に期待していきたいと思います。現在、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、私はSDGsの中でも特に重要な理念は「包摂性」だと思います。どんなに小さな集落に住んでいる人も決して見捨てられない地域づくり。強いものがより強くなり、弱いものは切り捨てられる「選択と集中」路線ではなく、様々な主体をゆるやかにつなぎ、包み込むコミュニティを目指す「包摂性」が、これからの地域再生の重要なキーワードになるのではないでしょうか。

 もう一つは「多様性」です。農山村の重要な地域資源は農地や山林などの自然資源ですが、集落の現状を見ると、そうした地域資源管理機能がどんどん弱体化しています。そこで、外部の関係人口が係わって、集落が果たしてきた様々な機能を支援する動きが各地で起こっています。

 その場合、コミュニティのあり方を開かれた形に変えていくことが当面の対応策として求められるのですが、“開く”ことは、多様性を受け入れることになります。住民の主体的参画を確保したうえで、多様性を踏まえた地域づくりのビジョンをどうつくっていくのか、検討が必要だと思います。