通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2020年3月号 高村義晴 日本大学理工学部教授

地域の新しい生き方に“誇り”“絆”“なりわいコミュニティ”
郵便局には外部の力を導き入れる役割を期待


 地方創生とは、地域が生き方を変えることを基軸とする、「行政主体のまちづくり」と「地域住民主体のまちづくり」との連携による地域創生(地域が誇りと活力をもって生きていくこと)なのではないでしょうか。今は創生技術を磨く方向に議論が集まりがちですが、第一に、元に戻らない部分があるという現実から目をそらさず、地域が自らの新しい生き方を見つめ直すことから始めないといけない。第二に疲弊地域の生き方論・在り方論が議論されなければなりません。そして第三にその生き方を実践する知恵と覚悟が入用となる。これらは、内面的な営みとなります。そこでは、これまでと同じような強みで生きていくわけにはいかないのです。昔を思い、自分の強みを活かそうとする考え方は逆にあだになりかねません。生き方に応じ、自身の内面を見つめ「新たな地域固有の価値」を見つけ出す。そうして疲弊した現実を受け容れ、地域の「新たな潜在可能性」を花開かせるのです。そのときに欠かせないのは、「空間的なまちづくり」を超えて、“仕事”“暮らし”“誇り”“絆・つながり”“楽しみ”といった成分をスパイラルに増やしていくことだと考えています。

 地方創生において、「地域の起業」興しはまさにこれからのひとつの方向です。地域がこれから生き方を変えて、例えば“なりわいコミュニティ”のようにして、地域の起業者等同士や地域内の組織とが結びつくことで新たな価値を創出していく。そのつなぎ役を郵便局の方で展開されるのは大いにあります。また、全国ネットを活かし、「二地域就労」など大都市や他所と結びつける仲介的役割もこれからの郵便局には望まれるのではないでしょうか。