通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2019年4月号  宮口侗廸(としみち)・早稲田大学名誉教授

“集落ネットワーク圏”構想を提言
郵便局は「地域を守る大事な機関」


 初期の過疎対策では「集落再編成」がかなり行われました。奥地の集落はもう少し中心集落の近くに新しく住宅を作って引越ししたらどうかという試みがなされたのです。ところが、人のつきあいの前に容れ物だけ作ったので、元の家に戻ってしまった人が結構いたのです。そうした反省もあって、集落を複数で支え合いましょうという考え方で「集落ネットワーク圏」構想が始まっているのです。実際、お店もなくなったような集落はたくさんあります。ガソリンスタンドが撤退した地域も数多くあります。それを旧小学校区単位ぐらいでまとまったらどうかということです。
 平成20年に「集落支援員」という制度を過疎問題懇談会から提案してつくったのですが、これも、市町村役場から委嘱して複数の集落を回って、いろいろ悩みを聞きながら、横の繋がりをつくるような方向が大事ではないかということで、総務省の特別交付税を使って生まれました。その後、総務省は「地域おこし協力隊」をつくったのです。そういうわけで、実際に旧小学校区でガソリンスタンドが撤退した後に、会社を立ち上げてガソリンスタンドの機能を引き継いでいるような例は全国に相当数出てきています。特に中山間部では車を持っていない人でも暖房用の灯油は必要です。その灯油を町まで買いに行くのは大変ですから、ガソリンスタンドの存在は必要不可欠なのです。国土交通省が推し進める「小さな拠点」も集落ネットワーク圏のなかの中心ということで、一応、矛盾なく使えるわけです。そこでネットワーク全体を動かしていくシステムが必要になります。全体を一つのものとして運営していく新しい組織、元気な女性が加われるような「地域運営組織」が必要だということです。