通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2019年3月号  乾  亨・立命館大学産業社会学部教授

“地域運営組織”で中山間地の自立を促せるか?
地方の郵便局を支える仕組みも必要


 中山間地域にとっての存続のために必要な要件は、「地域の自立」ではなく、「尊厳を失わないように支える」ということではないかと考えています。「支えてあげる」とか「もう町なかに引っ越してもらわないと困る」とか言うのではなく、これまで通りその場所で誇りを持って暮らすことができるように、自分達の文化を大事にしながら暮らすことができるように、支えていくことが重要なのです。地域おこし協力隊とか集落支援員が関わり知恵を絞ることで、その地域が活性化する可能性は否定しませんし、むしろ期待はしますが、多くの集落はそのうち消滅していく運命なのだろうと思います。でも、そうだとしても、いやそうだからこそ、そこに住んでいる人たち〈高齢者〉が、慣れ親しんだ風景やコミュニティのなかで、尊厳を失わずに暮らし続ける、ということが大切なのだと考えます。
 郵便局については素人ですからたいしたことは言えませんが、確実に言えることは、「本当の中山間地域」を支える役目を果たしてもらうことはすごく大事なことだということです。これからの右肩下がりの時代、見守りにしろ、情報の受け渡しにしろ。公的支援を小さな自治体(町や村)だけで行うことは無理です。社会福祉協議会や福祉施設、NPOのような、なかば公的なところが、公共と連携プレーをとりながらその任務を担わなければいけないと思います。そしてそのとき、今も日本の隅々で頑張っている郵便局に対する期待は大きいですね。ただ、郵便局もいまや「民」ですから、そのような公益的任務を無償で「お願い」するわけにはいきません。志だけでできる話ではないからです。弱い人たちをゆるやかに見守り支援するために、地方の郵便局を経営的に支える新たな仕組みや理屈を作る必要があります。