通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2018年5月号  作野広和・島根大学教育学部教授

地方創生に前向きな取り組みを
郵便局は地域のシンボル、多様な役割に期待


(人口減少で今後起こりうる最大の危機は大都市圏だと論文で指摘していることについて)
 大都市圏の考え方の基軸は「量」の問題です。例えば、先般も雪が降り、電車が止まると駅に入れないほどの人がいらっしゃる。同じように人は年を取っていきますから、高齢化の問題も一気に、しかも大量に来る。徐々になら、都会は都会なりの身のこなし方があるのですが、多分、そうはいかないで、おそらく、これから各自治体などは高齢者の福祉施設などを一生懸命に建てていくでしょう。そこで、今、待機児童が問題になっていますが、待機老人ホームなども問題が間違いなく出てきます。よく言われるような“孤独死”の問題ですとか、“独居老人”や“無縁社会”で何のために生きているかわからないような生活の質も問題も出てくる。社会福祉の問題や医療の問題、生き方の問題などそういう多様な問題が一気にやってくるのです。その第一波は団塊の世代の皆さんが後期高齢者の75歳を超えてから、ということになります。第二波は団塊ジュニアも多いですから、必ず襲ってきます。ただし、そこまではまだ先が長いです。あと半世紀近くあります。そうした社会をどう見つめるかは東京圏だけではないので、日本全体で考えなければいけないのです。
 郵便局の存在は大いに期待しています。郵便局は単に郵便や貯金・保険業務だけではなくて、地域の代表的な公共機関というシンボルになっています。昭和の合併で役場がなくなり、学校も統廃合され、JAは一気になくなっていきました。郵便局は“最後の砦”なのです。郵便事業といって手紙やはがきだけを意識するのではなくて、地域の歩いて行ける範囲に必ず郵便局があるので、もっと地域の“よろずや”的な役割を担ってほしいと思います。