通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2017年12月号 山下祐介・首都大学東京都市教養学部准教授に聞く

東京一極集中が地方創生の進展を阻害
“行き過ぎた市場化、民営化”は修正が必要


 今の地方創生は「しごとづくり」、「働き方改革」、「地方移住とふるさと納税」、「専門家派遣」という形でグループ分けが出来ると思っています。別にひとつひとつは悪いものではないのですが、論理や価値が間違っていると、しごとづくりが新しい産業おこしになって、中央の企業の侵入路になっていく。地方移住もただ移すだけでは人口増にはつながりません。むしろ自治体間の人口と金の獲得ゲームに展開してしまいます。また、専門家派遣も本当は専門家が東京から来て、地元の人と一緒にいろいろな知恵を出して、地方にないものを創出し、地方でしかできないことをやり始めれば確かに面白いのですが、東京が「上」で地方が「下」という状況の中でいくら来てもよいものは出ません。結局は価値や論理の問題であり、それを作り出している構造の問題なのです。
 この価値と構造の問題が非常に重要なのですが、政府がやってきたのは、民間の活力を導入することが全てだという非常に単純な論理で、既存の秩序を破壊するだけの規制緩和です。市場原理は一つの構造だけれど、規制緩和するだけでは単なる弱肉強食です。破壊にすぎない。それは強いものには都合はいいが、弱い者はどんどんと負けていくだけ。これではだめだということが二十年近くやって、もうハッキリしてきたのではないでしょうか。