通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2017年9月号 小田切徳美・明治大学農学部教授に聞く

「地域の誇り」を取り戻し、地域の可能性を共有
公民館運動、ワークショップ、都市・農村交流を
「小さな拠点」における郵便局の機能に期待


 「人」「土地」「むら」の空洞化が段階的に押し寄せてきています。それにどう対応していくのかということですが、中央政府や地方自治体も含めて、一つ一つの現象に対してはそれなりに対策を取っています。問題はその対策が長続きしないこと。端的に言えば、補助事業を導入してもその効果が長く続かず、いつの間にか事業自体が錆び付いてしまう。それぞれの現象に対する対症療法はもちろん必要ですが、その根源の部分、地域の「誇りを再建」するための対策が何よりも必要です。そこに対症療法的な対策が結び付くことによって初めて本格的な対策になっていくのだと思います。ただ、「誇り」の問題は、人々の意識の問題ですから大変難しいのです。もっと言えば、場合によっては人の気持ちを操作してしまうなど、政策が直接的になると甚だ危険なことになりますので、間接的ながらこういった部分をどのように対応するのかが求められます。
 私たちは今までの経験のなかで、3つぐらいの対応策があると思っています。1つは公民館運動、2番目は地域づくりのワークショップ、3番目は都市と農村の交流活動で、これらがいわば合わせ技で機能することによって、地域の「誇り」の再生につながっていくのです。これが人・土地・むらの3つの空洞化のベースの部分の手当てにつながるのだろうと思っています。