通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2017年4月号 沼尾波子・東洋大学国際学部教授に聞く(上)

郵便局ネットワークを生かし、参加型のサービス開拓を


 経済学のモデルは生産者が資源や労働力を生かしてモノをつくって、消費者はお金を払ってモノを購入するという仕組みになっていますが、これからの時代は生産者と消費者が分断されていた時代から、その垣根が取り払われてくるのではないかと思います。例えば、ウィキペディアにしても、昔だったらお金を払って百科事典を買っていたものが、今では自分はこの分野に詳しいからとボランタリーに参加しながらみんなでグローバルな辞書をつくっていく。また、あるTシャツメーカーでは、デザイナーにお金を払ってデザインをしてもらったTシャツを販売するというのではなく、ウェブ上で、こういうTシャツをつくってほしいと提案し、皆から投稿されたデザインを投票によって上位作品を商品化する。投票の点数が高いので確実に売れるわけです。かつ、デザインを考えた人は自分がデザインした商品を貰えるので嬉しい。メーカーとしてはデザイナーにコストを払わずに“売れるTシャツ”が出来上がるわけです。明らかに生産者と消費者の垣根が取り払われつつ、「参加」という行為を通じて、お金の流れ方も変わってきている感じがします。
 そう考えていくと「参加」というのは「つながり」が非常に大事なので、「つながり」をどういうふうに取り結ぶかが、これからの参加型の経済にとても大切なのではないかと思っています。