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事業報告

令和3年度事業報告

 第56期(自 令和3年4月1日~至 令和4年3月31日)の決算にあたり、当社団の事業概況についてご報告申し上げます。

 世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、国内においても首都圏を中心に緊急事態宣言が発出され、テレワークなどが推奨された結果、人々の行動変容を促す措置が取られ生活様式、働き方、社会構造の変革の契機になる可能性が出始めています。そのような状況下で8月に東京オリンピック・パラリンピックが無観客で開催されました。9月頃からデルタ株による感染者数は激減しましたが、令和4年1月初旬頃からオミクロン株が猛威を振るい世界的な感染拡大が起こり、政府は1月下旬から2月末日まで段階的に36都道府県にまん延防止等重点措置を適用し多くの地域では3月21日まで延長を致しました。
 政府が推進している地方創生施策は、少子高齢化、人口減少問題について国民意識の共有化を図り、人口減少の歯止めと地域経済縮小の克服をめざし、東京一極集中の是正を行い、地方の復興を図り、若い世代の人達が安心して就労、結婚、子育てができる地域社会を実現することを引き続き目標として、そのために、各自治体は「まち・ひと・しごと創生」として「人口ビジョンと総合戦略」を策定し、大都市圏から地方への人の流れ、関係人口、観光・交流人口の拡大、移住・定住人口の促進をめざし雇用の確保に向け地方創生に取り組んでいるところです。人口減少による過疎地域の拡大、自治体の支所機能の統廃合による公共サービスの低下が散見されるようになりました。
 今後、安全、安心、交流の拠点、生活インフラとして地域コミュニティの中で、郵便局の役割はますます大きくなっていくものと思います。
 現在、郵便局ネットワークにより国民に提供されるユニバーサルサービスについては、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社の責務として法定され、郵便局窓口において金融ユニバーサルサービスを提供することになりました。ユニバーサルサービスは、国民生活に必要不可欠な基礎的サービスを過疎地も含めすべての地域で誰もが利用可能な価格で安定的に提供できることとされ、これらの特徴を併せ持つサービスがユニバーサルサービスであるとされています。しかし、ユニバーサルサービスを提供し続けるのにはコストがかかり、そのコストを誰がどのような形で負担をしていくのかという大きな問題が残ります。
 ユニバーサルサービスを維持するということは一定の範囲で赤字サービスを提供し続けるということになるのです。
 平成31年4月1日から適用された独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律では、郵政事業のユニバーサルサービスの提供を安定的に確保するため郵便局ネットワークの維持を支援するための交付金及び拠出金の制度を新たに創設しました。また機構の名称を「独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」と改め、令和3年度、日本郵便には2.910億円交付し、今後ユニバーサルサービスを維持していく上において、この交付金・拠出金制度の更なる算定の見直しが必要になってきます。
 郵便事業全体の事業収益の長期低落傾向に対して、ユニバーサルサービスの提供に影響を及ぼさないようにするため郵便法の改正が与野党一致で令和2年11月に成立しました。ユニバーサルサービスのコスト負担の問題は、将来的には国民全体として捉えていく必要があります。ユニバーサルサービスが課され、日本全国にきめ細かなネットワークを持って、公共サービスを行っているのは郵便局だけです。 郵便局を通信、物流、金融の拠点、さらに社会資本として行政と生活の代行機能を併せ持つことができれば、日本郵政グループの企業価値も向上するものと思われます。
 日本郵政の資本政策について、日本郵政株式会社の株式の売却益の一部(4兆円程度)は東日本大震災の復興債の償還財源として復興財源確保法で決められています。日本郵政株式会社は政府による3回の売却、3回の自社株買いを繰り返し行い、その後大量の株式消却を行い法律で決められた最低保有割合33.3%(10月29日)に減少致しました。国の保有割合が50%を割って33.3%にまで減少することで国の影響力が弱まる可能性が出てきました。また、かんぽ生命保険は日本郵政株式会社が保有する株式割合を49.9%にまで減少し、念願であった新規事業について認可制から届出制に移行できるものとなっていましたが、他の民間生命保険会社への配慮義務等が存続し、かつ、届出制になった後の届出のスキームが決まっていない現状があかるみになりました。日本郵政株式会社及びかんぽ生命保険は自社株買い、株式消却を繰り返すことで、発行済み株式数を大幅に減少させ、結果的に時価総額が減少し企業価値も低下してしまいました。郵政民営化法は日本郵政グループ各社とのシナジー効果を最大限活かし、効率的なグループ運営を発揮することを目指したものと受け取られています。
 今後、株主の増加により株主利益の最大化と効率化・合理化、改正法の趣旨である地域性及び公共性をどのように維持していくことができるのか、ますますバランスのとれた経営が求められてきます。会員のニーズに応えるべく、機関誌『逓信 耀』の誌面をより一層充実させるため、毎月企画編集会議を開催し、焦点を明確にして全国各地に取材を行いました。
 編集方針については、日本郵政グループ各社の経営戦略を分析し、郵政民営化法等改正法によって、収益性のみならず公益性及び地域性が求められる郵政事業について、さまざまな角度での検証を行い、その問題点と課題を浮き彫りにしました。また、シリーズ「地方創生のいま、地域を元気に!」では取材を通して地方創生の意義、地域における郵便局の役割等を紹介することが出来ました。さらに「地方創生における地方自治と郵政事業」では、市町村長から郵便局と地方自治体との連携施策、郵便局が地域社会で果たしてきた役割等について意見を伺うことが出来ました。全国の郵便局長にご協力いただき、インタビューや各種座談会等を通じて、地域社会に貢献する郵便局の実像や今後の展望等について掲載することができました。
 新郵政事業ビジネスモデル調査研究委員会を17名のメンバーで開催し、郵政民営化法の検証、現場の郵便局の現状等、今後の郵政事業の在り方について有意義な委員会を開催することができました。
 公益目的事業として行った「郵便プラットフォーム上のビジネス展開案:大学生の視点を生かした農山村集落活性化と郵便局との連携可能性に関する調査研究」(福島大学行政政策学類岩崎由美子教授他)、「競争時代を迎えた国内外における情報通信・金融・物流事業の現状と「地域再生」の視点から見た今後の郵政事業の在り方」(滋賀大学経済学部横山幸司教授)等の調査報告会を開催することができ、いずれも時宜を得た大変有意義な報告会で、資料を関係機関に配布致しました。また全国各地に講師派遣等を行い会員のニーズに応えることができました。

《理事会開催》
 ○ 第1回
   令和3年 4月27日(火)アルカディア市ヶ谷7階「雲取の間」
  ・令和2度事業報告(案)及び収支決算(案)について
  ・公益目的支出計画報告について
  ・令和3年度総会日程について
  ・その他
 ○ 第2回
   令和3年5月24日(月)アルカディア市ヶ谷7階「高尾の間」
  ・当面の諸課題について
  ・その他
 ○ 第3回
   令和3年8月24日(火)アルカディア市ヶ谷7階「雲取の間」
  ・第1四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・その他
 ○ 第4回
   令和3年11月18日(木)アルカディア市ヶ谷7階「飛鳥の間」
  ・第2四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・令和3年度公益目的事業計画変更について
  ・その他
 ○ 第5回
   令和4年 3月23日(木)アルカディア市ヶ谷7階「妙高の間」
  ・第3四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・令和4年度事業計画(案)及び収支予算(案)について
  ・その他

《総会開催》
 ○令和3年 5月24日(月)アルカディア市ヶ谷7階「雲取の間」
  ・令和2年度事業報告(案)及び収支決算(案)、会計監査報告
  ・公益目的支出計画報告等について
  ・その他
 ○令和4年 3月23日(木)アルカディア市ヶ谷7階「妙高の間」
  ・令和4年度事業計画(案)及び収支予算(案)について
・令和4年度公益目的事業計画について
  ・その他

《調査・研究会》
・郵便プラットフォーム上のビジネス展開案
  大学生の視点を生かした農山村集落活性化と郵便局との連携可能性に関する調査研究
  福島大学行政政策学類 岩崎由美子教授
・競争時代を迎えた国内外における情報通信・金融・物流事業の現状と
 「地域再生」の視点から見た今後の郵政事業の在り方
  滋賀大学経済学部 横山幸司教授

《報告会開催》
 ○ 令和4年 3月17日(木)アルカディア市ヶ谷7階「妙高の間」
   福島大学行政政策学類 岩崎由美子教授他ゼミ生 報告書
 ○ 令和4年 3月24日(木)アルカディア市ヶ谷7階「妙高の間」
   滋賀大学経済学部  横山幸司教授 報告書

《新郵政事業ビジネスモデル調査研究委員会開催》
・「大学生の視点を生かした農山村集落活性化と郵便局との連携可能性に関する調査報告書」
・「市民協働政策における郵便局と地方自治体との連携に関する研究」報告書

《資料集作成》
 有識者、郵便局長等17名のメンバーにより委員会を構成。郵政民営化法、郵政改革法案から郵政民営化法等一部改正法の内容について幅広く検証を行い、ユニバーサルサービスの提供の在り方、コスト問題等、日本郵政グループの資本政策、海外の郵便局の現状、郵便局に期待される役割について調査研究を行うことができた。

  第1回   9月17日(金)アルカディア市ヶ谷4階「飛鳥の間」
  第2回  10月21日(木)アルカディア市ヶ谷4階「飛鳥の間」
  第3回  11月18日(木)アルカディア市ヶ谷4階「飛鳥の間」
  第4回   3月23日(水)アルカディア市ヶ谷7階「妙高の間」

≪寄付・寄贈≫  公益財団法人 通信文化協会

 令和3年度事業報告には「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」第34条第3項に規定する附属明細書「事業報告の内容を補足する重要な事項」は存在しないので、これを作成しない。