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事業報告

平成30年度事業報告

 第53期(自 平成30年4月1日~至 平成31年3月31日)の決算にあたり、当社団の事業概況についてご報告申し上げます。

 平成30年度は自然災害が相次ぐ年でした。2月の福井豪雪に始まり、6月の大阪府北部地震、7月の西日本豪雨(広島県・岡山県・愛媛県)、9月の北海道胆振東部地震といった自然災害が多数発生し、地域での防災、減災対策への取り組みが重要になってきています。
 政府が推進している地方創生事業は、人口減少問題について国民意識の共有化を図り、人口減少の歯止めと地域経済縮小の克服をめざし、東京一極集中の是正を行い、地方の復興を図り、若い世代の人達が安心して就労、結婚、子育てができる地域社会を実現することを目的としたもので、そのために、各自治体は「まち・ひと・しごと創生」として「人口の長期ビジョンと総合戦略」を策定し、大都市圏から地方への人の流れ、観光交流人口の拡大、移住定住人口の促進、雇用の確保等地方創生に取り組んでいます。人口減少による過疎地域の拡大、自治体の支所機能の統廃合、経済価値を重視するあまり心の過疎化が生じている昨今、安全、安心、交流の拠点として地域コミュニティーの中で期待される郵便局の役割は大きいものがあります。
 現在、ユニバーサルサービスの提供については、あくまでも日本郵政株式会社、日本郵便株式会社の責務として法定され、郵便局窓口において金融のユニバーサルサービスを提供することになりました。ユニバーサルサービスは、国民生活に必要不可欠な基礎的サービスを過疎地も含めすべての地域で誰もが利用可能な価格で安定的に提供できることとされ、これらの特徴を併せ持つサービスがユニバーサルサービスであるとされています。しかし、ユニバーサルサービスを提供し続けるのにはコストがかかります。そのコストを誰がどのような形で負担をしていくのかという大きな問題があります。例えば都市部での黒字を過疎地などでの赤字に補填する方法、ある部門での黒字を他の部門の赤字に補填することを内部補助と言います。ユニバーサルサービスを維持するということは一定の範囲で赤字サービスを提供し続けるということになるのです。
 平成30年6月1日に成立した独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律では、郵政事業のユニバーサルサービスの提供を安定的に確保するため郵便局ネットワークの維持を支援するための交付金及び拠出金の制度を新たに創設しました。この法律は一部を除き、交付金の交付及び拠出金の徴収の規定は平成31年4月1日から適用されることになり、さらに機構の名称を「独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」と改めました。 
 ユニバーサルサービスのコスト負担の問題は、将来的には国民全体として捉えていく必要があります。ユニバーサルサービスが課され、日本全国にきめ細かなネットワークを持って、公共サービスを行っているのは郵便局だけです。
 郵便局を通信、物流、金融の拠点、さらに社会資本として行政と生活の代行機能を併せ持つことができれば、日本郵政グループの企業価値も向上するものと思われます。
 郵政民営化法は日本郵政グループ各社とのシナジー効果を最大限活かし、効率的なグループ運営を発揮することを目指したものと受け取られています。
 今後、株主の増加により株主利益の最大化と効率化・合理化、改正法の趣旨である地域性及び公共性をどのように維持していくことができるのか、ますますバランスのとれた経営が求められてきます。
 会員のニーズに応えるべく、機関誌『逓信 耀』の誌面をより一層充実させるため、毎月企画編集会議を開催し、焦点を明確にして全国各地に取材を行いました。
 編集方針については、国内外の政治・経済問題の専門家を中心に執筆いただき、さらに、日本郵政グループ各社の経営戦略を紹介し、郵政民営化法等改正法によって郵便局ネットワークの維持・活用、公益性及び地域性が求められる郵政事業と、国会議員、有識者の先生方等によりさまざまな角度での検証を行い、その問題点と課題を浮き彫りにしました。また、シリーズ「地方創生のいま、地域を元気に!」では12名の有識者の方々に取材を通して地方創生における郵便局の役割等を紹介することが出来ました。さらに「地方創生における地方自治と郵政事業」というテーマで12人の市町村長から郵政事業と地方自治体との関係、郵便局が地域社会に果たしてきた役割、連携施策等について意見を伺うことが出来ました。全国の郵便局長にご協力いただき、インタビューや各種座談会等を通じて、地域社会に貢献する郵便局の実像や今後の展望等について掲載することができました。
 公益目的事業として行った「日本郵政の経営分析と企業価値評価(2019年)」(京都大学経済学部藤井秀樹ゼミナール 日本郵政企業分析チーム)、「海外における郵便サービス品質の現状と離島の郵便マネジメントに関する研究」(作新学院大学経営学部武井孝介教授、樋口 徹教授等)等の報告会を開催することができ、いずれも時宜を得た大変有意義な報告会で、資料を関係機関に配布致しました。また全国各地に講師派遣等を行い会員のニーズに応えることができました。

《理事会開催》
 ○ 第1回
   平成30年 5月 7日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・平成29年度事業報告(案)及び収支決算(案)について
  ・公益目的支出計画報告について
  ・平成30年度総会日程について
  ・その他
 ○ 第2回
   平成30年 5月28日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・当面の諸課題について
  ・その他
 ○ 第3回
   平成30年8月28日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・第1四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・その他
 ○ 第4回
   平成30年11月26日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・第2四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・その他
 ○ 第5回
   平成31年 3月 5日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・第3四半期事業報告及び収支決算報告について
  ・平成31年度事業計画(案)及び収支予算(案)について
  ・その他

《総会開催》
 ○平成30年5月28日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・平成29年度事業報告(案)及び収支決算(案)、会計監査報告
  ・公益目的支出計画報告等について
  ・役員改選について
  ・その他
 ○平成31年3月 5日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・平成31年度事業計画(案)及び収支予算(案)について
  ・その他

《調査・研究会》
・日本郵政の経営分析と企業価値評価〔2019年〕。
  京都大学大学院経済学研究科 藤井秀樹教授(日本郵政企業分析チーム)
・海外における郵便サービス品質の現状と離島の郵便マネジメントに関する研究。
  作新学院大学経営学部 武井孝介教授・樋口 徹教授
・ユニバーサルサービス提供義務と利便性向上に向けて(第5回開催)

《報告会開催》
 ○ 平成31年 3月 5日(金)ホテル・ルポール麹町
  ・日本郵政の経営分析と企業価値創造〔2019年〕
   価値創造にむけた新規事業のゆくえ
     【郵政事業企業分析チーム】
     京都大学大学院経済学研究科 藤井秀樹 教授他学生4名
     立命館大学大学院      奥村陽一 教授
     金沢学院大学        渡邉誠士准教授
  ○ 平成31年3月19日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・海外における郵便サービス品質の現状と離島の郵便マネジメントに関する研究
     【郵政事業戦略研究プロジェクトチーム】
     作新学院大学 経営学部   武井孝介 教授
     同             樋口 徹 教授
     同             荒木 宏 教授

《資料集作成》
・日本郵政の経営分析〔2019年〕
 中期経営計画の検証と日本郵政グループの今後
・海外における郵便サービス品質の現状と離島の郵便マネジメントに関する研究〔2019年〕

≪寄付・寄贈≫  公益財団法人 通信文化協会

平成30年度事業報告には「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」第34条第3項に規定する附属明細書「事業報告の内容を補足する重要な事項」は存在しないので、これを作成しない。