一般社団法人 通信研究会
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今期は、前期に引き続き郵政事業及び電気通信、放送の分野におけるさまざまな施策、情報等について広く国民に啓蒙していきたい。
現在、我が国を取り巻く社会、経済環境は相変わらず厳しいものがある。リーマンショック(米国大手証券会社・投資銀行)の破綻が引き金となった世界同時金融危機、株式市場の暴落等さらに円高、デフレ、東日本大震災等の影響により一段と景気回復が遅れ、抜本的な経済対策が求められている。
中小の製造機メーカーなどは生産拠点を求めて海外に進出するなど、国内産業の空洞化が加速している。このような状況の中、非正規社員の増加による雇用の不安定化、医療、年金などの社会保障問題も大きな社会問題になりつつある。
そうした中、情報通信技術(ICT)の利活用は、少子高齢化、社会インフラの老朽化、地球温暖化等の諸課題に向け、国民生活の重要なライフラインとして、わが国の新たなまちづくり、被災地域の情報通信基盤の復旧・復興に欠くことのできない大きな存在になっている。
インターネット、電子メールの普及によって、ITへの依存度が高まる中、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」安心、安全に利用して快適に暮らせるユビキタスネット社会の実現を目指し、情報通信技術の進歩は、日本経済の発展を支える原動力の一つになっている。
連立政権によって郵政改革が抜本的に見直されるようになったことは国民、利用者にとって歓迎されるべきことである。現行の郵政民営化法では、分社化と効率化優先の影響により、各種のサービスダウンが顕著に見られるようになった。さらに金融庁監督の下、その検査・監査等が小規模郵便局にも適用され、煩雑な手続き等によりお客さまの郵便局離れも指摘されるようになった。
民営化によって、地域貢献施策として行われていたひまわりサービス等ができなくなり、郵便局が地域行事などに参加することもできなくなった。
金融機関にはユニバーサルサービスを提供する義務はなく、郵便局の金融サービスも将来にわたって制度的に担保されているわけではない。15年間で金融機関の減少率は大手銀行約3割、地方銀行、信用金庫は約1割、信用組合、農協は約4割近く店舗が減少している。中山間地や過疎地を中心に不便が生じているのである。平成の大合併以降、市町村の合併が繰り返され現在の市町村数1.719、その中で金融機関が郵便局のみは23町村、郵便局と農協のみの町村数は156町村、合わせると全体の1割の市町村数にあたるといわれている。過疎地域等に行けば行くほど年金の受け取りや、金融の決済など郵便局が最後の拠り所になっているのである。
郵政民営化の見直しの基本は、国民生活の確保および地域社会の活性化等、利用者の利便性を取り戻すための改革である。国の責務として国民に郵便事業及び金融(郵便貯金、簡易生命保険)にも郵便局窓口を通じてユニバーサルサービスを提供する義務を負うことであり、その義務履行を日本郵政会社に委託するとされている。
通信研究会としては、郵政改革についてさまざまな角度から検証しつつ、公益性、公共性が求められ地域貢献施策を担うことになる郵便局が、地域社会に対して国民の期待に応えられ、さらに新しいビジネスモデルを早急に構築できるよう協力し提案をしていきたい。
今後少子高齢化、過疎化が進むなか、都市部と地方部との格差是正を図るためにも、地域社会における有人窓口の特性を持つ郵便局の役割はますます増大していく。
前期に引き続き日本郵政グループの持つ潜在的な力、郵便局ネットワークの在り方、郵政事業が発展するための新たな役割を調査、研究を行いその成果を会員及び関係機関に開陳していきたい。
《今期の事業計画》
Ⅰ 機関誌 逓信『耀』の発行と編集方針について
○ 総務省の施策を中心として郵政事業・電気通信・放送分野等の今後の課題について。
○ 郵政民営化の現状と問題点、郵政改革全般について国会の先生方及び有識者等の意見を掲載。
○ 日本郵政株式会社(各事業会社)の経営戦略について。
○ 郵便局における新しいビジネスモデルの提案について。
○ 郵便局長の取材を通して郵便局の役割、地域密着型郵便局のあり方について。
○ 世界の郵政改革の現状と課題について。
○ 身近な防災講座について。
○ 連載企画関係 *「シリーズ政策を問う!」*「霞が関からのレポート」 *「民営化という虚妄を超えて」*「郵政事業の課題と展望」*「郵便局における地域貢献活動の重要性」*「地方自治と郵政事業」*「逆境に打ち克つ組織づくり」等掲載。
○ 増刊号の発行について〔予定〕
Ⅱ セミナー・研修会の開催
会員各位の多様な要望に応えるべく、郵政事業のみならず、電気通信、放送分野等についても当面の諸問題について勉強する。
Ⅲ 調査・研究会の開催
・郵政改革検証委員会の開催
郵政民営化の問題と課題について、さまざまな角度から検証を行う。
・新郵政事業ビジネスモデル調査研究委員会の開催
短期・中期的視点において、諸外国の郵政改革も参考にしながら、郵政事業の在り方を検証し、郵政グループ各社の成長戦略を考究する。
・海外における郵政事業の変遷とわが国における郵政事業のあり方についての調査研究会開催
・未来の郵便局を考える研究会の開催
長期的な視点で地域社会における郵便局の機能、在り方を検証する。
Ⅳ メール情報サービスおよびホームページの充実
・会員向けメール情報サービスのさらなる充実。さらに利用者の増大を図る。
・当法人のホームページのさらなる充実を図る。
V 相談窓口について
各種セミナー、講演会等の講師派遣、会員等のさまざまな要望、照会に対応するための「相談窓口」の対応の充実。
VI その他
・国会情報等の各種資料集の作成。
以上のように各種事業を通じて当社団の役割は、今後ますます増大し、そのためには正会員、賛助会員の拡大、増強を図り、活発な事業活動を展開していきたい。このような活動から発生する会費収入をはじめとする諸収入を源泉として、さらに有意義な研究活動を続けていき、社会に対する貢献度の高い社団を目指し、会員の皆様方のさらなるご協力を宜しくお願い申し上げます。