一般社団法人 通信研究会
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今期は、前期に引き続き郵政事業および電気通信、放送の分野におけるさまざまな施策、情報等について広く国民に啓蒙していきたい。
現在、我が国は世界同時不況、経済の低迷等により、社会生活にさまざまな影響がでている。そうした中、情報通信技術(ICT)の利活用の可能性は、社会・経済や生活、文化にますます大きな影響を与え、国民生活の中で広がりを見せている。政府は、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」安心、安全に利用して快適に暮らせるユビキタスネット社会の実現を目指して推進している。また、情報社会の安全、安心を実現すべく情報セキュリティ対策の推進を図りつつ、2011年地上デジタル放送への完全移行に向けた総合対策(国民への説明・周知・相談、受信機購入の支援等)やデジタル・ディバイド解消戦略の推進も行われている。このような情報通信技術の進歩は、日本経済の発展を支える原動力の一つになるが、その一方で少子高齢化や環境問題、過疎化等さまざまな課題も明らかになってきている。
昨年政権交代により、郵政改革が抜本的に見直されるようになったことは国民、利用者にとって歓迎されることである。現行の郵政民営化法では、4分社化と効率化優先の影響により、各種のサービスダウンが見られるようになった。さらに金融庁監督下のもとその検査・監査等が小規模郵便局にも適用され、煩雑な手続き等によりお客さま離れも指摘されるようになった。郵便サービスでは、「郵便集配及び郵貯、簡保の外務営業拠点の再編計画」により、配達エリアの「広域化」に伴い、大幅な遅配や誤配が見られるようになり、さらに郵便局の「時間外窓口」が廃止されてしまった。郵貯サービスでは、郵便局で取り扱われる送金、決済サービスの手数料は、民営化スタートと同時に、そのほとんどが軒並み「値上げ」されることになった。また局外ATМ(現金自動預払機)は、年間の利用件数がある一定の件数に満たない採算性の低いものは、地域の事情をほとんど考慮することなく、「統廃合と再配置」が進められている。総合担務制度が機能しなくなった影響で、ひまわりサービスは形骸化しさらにかんぽの宿譲渡問題では、入札経緯に不透明さが指摘されるなど、民営化の目的が一体何のための誰のための民営化なのか改めて問われている状況であった。
今通常国会で提出される郵政改革法案(仮称)は、郵政事業が担う公益性と地域性を軽視された点を踏まえ、郵便局を「国民共有の財産」と位置づけ、分社化による弊害に対しては「4分社化体制を見直し経営形態の再編を行い、郵便、郵便貯金、簡易生命保険の基本的なサービスを全国あまねく公平に利用者本位の簡便な方法により、郵便局で一体的に利用できるようにする」とした。さらに金融にはユニバーサルサービスが課せられていなかったが、「郵便貯金、簡易生命保険の基本的なサービスについてのユニバーサルサービスを法的に担保できる措置を講じる」など国民生活や、地域経済の活性化等念頭に置いた見直しに向けた内容になっている。経営の自由度等については、政府の中で調整中とのことだが、ユニバーサルサービスの適用を課すのであれば、経営の自主性が尊重され、各種税についても減免措置等を配慮してもらわなければ何のための郵政改革なのか分からないのではないか。
通信研究会としては、郵政改革法案(仮称)について検証しつつ、公益性と地域貢献施策を担うことになる郵便局が、地域社会に対して国民の期待に応えられ、さらに新しいビジネスモデルを早急に構築できるよう協力提案していきたい。現政権では、地域主権を確立するため地方分権施策を進めていく方針である。少子高齢化、過疎化が進むなか、都市部と地方部との格差是正を図るためにも、今後地域社会における郵便局の役割はますます増大していく。
前期に引き続き郵便局ネットワーク及び地域社会の活性化を図るべく、郵政事業の新たな役割を調査、研究してその成果を会員及び関係機関に開陳していきたい。
記
《今期の事業計画》
Ⅰ 機関誌逓信『耀』の発行と編集方針について
○ 総務省の施策を中心として郵政事業・電気通信・放送分野等の今後の課題について。
○ 郵政民営化の現状と問題点、郵政改革全般について国会の先生方及び有識者等の意見を掲載。
○ 日本郵政株式会社(各事業会社)の経営戦略について。
○ 郵便局における新しいビジネスモデルの提案について。
○ 郵便局長の取材を通して郵便局の役割、地域密着型郵便局のあり方について。
○ 郵政各事業に関る情報等について。
○ 世界の郵政改革の現状と課題について。
○ 防災問題について。
○ 連載企画関係 *「シリーズ政策を問う!」、*「視点・世界の郵便局改革」、*「霞が関からのレポート」、*「民営化がもたらした影」、*「郵政民営化見直しの方向性」等については引き続き掲載。
○ その他。
Ⅱ 郵政事業フォーラム21の開催
会員各位の多様な要望に応えるべく、郵政事業のみならず、電気通信、放送分野等についても当面の諸問題について勉強する。
Ⅲ 調査・研究会の開催
・郵政問題研究会(仮称)開催
今通常国会に提出される予定の郵政改革法案(仮称)をさまざまな角度から検証する。
・新郵政事業ビジネス・モデル調査研究委員会の開催
短期・中期的視点において、諸外国の郵政改革も参考にしながら、郵政事業の在り方を検証する。
Ⅳ メール情報サービスの充実
会員向けにメールにて情報サービスを提供できるようソフト面の充実を図る。さらに利用者の増大を図る。
V 相談窓口について
各種セミナー、講演会等の講師派遣、会員等のさまざまな要望、照会に対応するための「相談窓口」の対応の充実。
VI その他
・国会情報等の各種資料集の作成。
以上のように各種事業を通じて当社団の役割は、今後ますます増大し、そのためには正会員、賛助会員の拡大、増強を図り、活発な事業活動を展開していきたい。
このような活動から発生する会費収入をはじめとする諸収入を源泉として、さらに有意義な研究活動を続けていき、社会に対する貢献度の高い社団を目指します。会員の皆様方のさらなるご協力を宜しくお願い申し上げます。