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事業報告

平成21年度事業報告

 第44期(自 平成21年4月1日〜至 平成22年3月31日)の決算にあたり、当社団の事業概況についてご報告申し上げます。

 平成19年10月1日に郵政事業が民営分社化されて、2年と6ヶ月が経過しました。郵政民営化の最終最大の目的は、国民利便とサービスの向上でありましたが、現実には郵政民営化後サービスの低下は顕著に現れ、 窓口での待ち時間が長く、貯金・保険の手続きが複雑になり、送金・決済サービスの手数料が引き上げられた等、さらに集配局再編による遅配、誤配も多数起こっています。 また、民営分社化後には郵便局における利用者への郵政三事業の一元的な対応サービスが損なわれたとの批判も多く寄せられています。

 このような状況の中、昨年8月に行われた第45回総選挙を経て政権交代が実現し、鳩山3党連立政権(民主党・社民党・国民新党)は、 郵政株式売却凍結法案の早期成立、郵政改革基本法案の立案、成立等を政策合意として、9月16日に発足しました。 10月20日には「郵政改革の基本方針」が閣議決定され郵政事業の国民の権利として、国民共有の財産である郵便局ネットワークを活用し、 郵便、郵便貯金、簡易生命保険の基本的なサービスを全国あまねく公平にかつ利用者本位の簡便な方法により、郵便局で一体的に利用できることを柱として、 有人窓口である郵便局を格差是正のための地域のワンストップ行政の拠点として活用すると致しました。

 郵政株式売却凍結法案は平成21年12月4日の参議院で可決、成立されました。 この法律は、日本郵政株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式処分の停止及びかんぽの宿、メルパルクの譲渡・廃止の停止等を目的とする法律で、 いずれも別に法律で定める日までの間、その保有する株式を処分してはならないとしています。 これにより、10年以内にゆうちょ銀行、かんぽ生命会社の全株式の売却を義務付けた法律は効力を失いました。

 郵政事業は、税金を使わずに三事業一体で効率よく運営され、金融にもユニバーサルサービスを提供してきました。 この郵政株式売却凍結法を受け、2月8日に「郵政改革の素案」が公表され、与党が審議する郵政改革関係政策会議は3月29日まで11回、 また業界団体からのヒアリングも複数開催されました。 郵政事業見直しの基本フレームは、政府の下に親会社(現在の日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局会社)が置かれ、 その出資比率は政府が常時三分の一超を、親会社の株式を保有することとし、親会社はその下に業法下の一般会社として位置付けられた銀行会社、保険会社を置き、 常時三分の一超の株式を親会社が保有することになりました。 また、国民に対してユニバーサルサービス義務を本来は国が負うところ、親会社は政府が国民に対して負うべき金融を含めたユニバーサルサービス義務を受託することとなりました。 そして、利用限度額は、郵政改革法案(仮称)が成立した段階で郵便貯金が現在の預入限度額1.000万円から2.000万円、 保険の加入限度額が1.300万円から2.500万円に引き上げられます。 郵政改革法案の成立に合わせて政令を改正し、新しい限度額に移行することとしたのです。 民営化以後、日本郵政グループの経営が大きく悪化しつつある現状を考えるとき、新規事業を取り入れるなど早急に事業を立て直す必要があります。

 このような郵政事業を取り巻く状況の中、会員のニーズに応えるべく、機関誌『逓信 耀』の誌面をより一層充実させるため、 毎月企画編集会議を開催し、焦点を明確にして全国各地に取材を行いました。

 編集方針については、総務省の施策を中心に日本郵政グループ各社の経営戦略を紹介。 さらに郵政改革法案(仮称)作成に向けた様々な動向、郵政改革関係政策会議等、公益性と企業性が求められる郵政事業について、 国会、有識者の先生方等によりさまざまな角度での検証を行っていただき、その問題点と課題を浮き彫りにできました。 また、郵便局長の皆様方にご協力いただき、インタビューや各種座談会等を通して、地域社会に貢献する郵便局の実像や今後の展望等について掲載することができました。

 郵政事業フォーラムは、第29回目を開催し時宜にあった講演テーマにより好評を得ました。

 新郵政事業ビジネスモデル調査研究委員会は4回開催し、各委員より貴重な建設的な意見を伺い、今後資料集を作成しその成果を開陳していきます。

 郵政民営化見直しの動向ならびに郵政改革に関するヒアリング、郵政改革関係政策会議での議論及び資料等をまとめた郵政改革論議の資料集を作成しました。

新郵政事業ビジネスモデル調査研究委員会委員及び開催状況
委員長 石井晴夫 東洋大学経営学部教授
委員 内山 隆 青山学院大学総合文化政策学部教授
  石田直美 (株)日本総合研究所創発戦略研究センター主任研究委員
  武井孝介 学習院大学経済学部非常勤講師
  岩波美智子 英国バーミンガム大学大学院博士課程終了
  山根 学 学習院大学経営学研究科博士前期過程
     
第1回 10月15日 「イギリス郵政事業 最新情報」
第2回 12月 3日 「公益事業の概念は消滅したのであろうか」
~映像産業の振興政策~
第3回  1月 7日 「公益事業におけるユニバーサルサービスの現状」
~郵政改革の課題とその方向性~
「フォワーダー・ビジネスにおける価値創造のメカニズム」
第4回  3月 3日 「公共サービスと補助のあり方」
資料集の作成

郵政改革関係資料集を作成し、関係機関に配布

  • 郵政民営化見直しの動向
  • 郵政改革に関するヒアリング
  • 郵政改革関係政策会議の議論、資料等
第29回郵政事業フォーラム21を開催
  • 平成22年2月1日 時事問題について
     講師:総務大臣顧問 国民新党顧問 亀井久興先生
     霞が関東海大学校友会館
機関誌 逓信「耀」(主な掲載内容) 毎月1回発行
郵政民営化を検証する!
11月号 参議院議員 長谷川憲正総務大臣政務官に聞く!
今明らかにされる「郵政改革関連一括整備法」
1月号~2月号 新春フレッシュ対談 郵政出身議員が語る郵政事業改革に向けての抱負
衆議院議員 奥野総一郎  衆議院議員 高井崇志
シリーズ 政策を問う!
5月号 第6回(上) 参議院議員 長谷川憲正先生に聞く
揺るぎない郵政民営化の抜本見直しへの道
6月号 第6回(下) 参議院議員 長谷川憲正先生に聞く
見えてきた見直しの骨格
7月号 第7回 参議院議員 大塚耕平先生に聞く
国民の生活の利便性向上のために三事業を一体的に提供
10月号 第8回 参議院議員 自見庄三郎先生に聞く
連立政権の成果 郵政株式売却凍結法、郵政改革基本法案を臨時国会に
11月号 第9回 衆議院議員 城内 実先生に聞く
郵政民営化の過ち 歴史が証明 国家国民のために信念を貫く
12月号 第10回 衆議院議員 小泉龍司先生に聞く
パブリックを基調とした制度改正を
2月号 第11回 総務省総務大臣顧問 亀井久興先生に聞く
行政サービスの拠点、郵便局の役割さらに大きく
3月号 第12回 衆議院議員 津島恭一先生に聞く
「地域、国民の役に立つ郵政事業」を再構築
インタビュー
6月号 浦野修 前全国郵便局長会会長に聞く!
政治・経済分野

政治評論家  森田 実

8月号 郵政民営化問題の決着は総選挙で
9月号 総選挙後の政治体制について
10月号 新政権・政局展望
11月号 鳩山内閣と政局展望
12月号 鳩山内閣が背負う矛盾「明」と「暗」
対談
1月号 新春特別対談 闘う強い全特へ 会員各位の意識改革を
全国郵便局長会会長 名古屋森孝郵便局長 柘植芳文
東洋大学経営学部教授 経済学博士    石井晴夫
郵政民営・分社化後のユニバーサルサービスの法的枠組みとその考え方(Ⅳ・完)
4月号 東洋大学経営学部教授 経済学博士 石井晴夫
新シリーズ 新時代における公共サービス供給と郵政事業が目指すべき方向性(1)~(6)
5月号
6月号
7月号
8月号
9月号
10月号
学習院大学経済学部講師 経営学博士 武井孝介
いま必要な歴史認識と民営化の問題(28)~(30)
4月号
5月号
6月号
日本宗教文化史学会理事長  小林正義
霞が関からのレポート(62)~(73)

産経新聞経済部記者 福島 徳
郵政事業を巡る総務省、日本郵政株式会社、国会等の動向を分析し、タイムリーに紹介

4月号 四分社化維持という結論ありきの民営化委員会
5月号 総務省調査で改めて露呈した「かんぽの宿」売却のできレース
6月号 政権交代で郵政民営化の抜本見直し実現を
7月号 総務相更迭、西川続投で露呈した郵政民営化のいかがわしさ
8月号 政権交代で構造改革路線を見直し、国民本位の政治実現を
9月号 郵政民営化・四分社化見直しに向け、党派を超えた連携を
10月号 政権交代で動き出す、郵政民営化見直し
11月号 郵政民営化見直しへ動き出す新政権
12月号 早期成立が求められる株式凍結法案
1月号 緒についた民営化・四分社化の見直し
2月号 緒についたばかりの郵政民営化・四分社化見直しの動き
3月号 具体化しはじめた経営形態見直し論議
新シリーズ 暮らしの経済の智恵

経済ジャーナリスト 荻原博子

4月号 これから起きることと、しなくてはいけないこと
5月号 家計をスリム化するのは、自分に合った方法で
6月号 『生命保険』はどう見直すの?
7月号 老後の生活は、どうするの?
8月号 老後の生活は、どうなるの?
9月号 公的な保険を使いこなしましょう
新シリーズ(1)~(5) 郵政民営化見直しの方向性

東京国際大学経済学部教授 田尻嗣夫

11月号 (1)郵政三事業の「範囲・規模の経済」を活かす持株会社に
12月号 (2)志を活かす「郵政改革法案」生活者に直結する資金循環へ
1月号 (3)政府は行政権より株主権の機動的行使を
2月号 (4)ポストショップ化路線を捨てて、社会インフラとしてコンビに対抗を
3月号 (5)「郵政文化の再興」につながる制度設計を
競争政策を転換した世界の現状(1)~(4)

佐々木 勉

9月号 (1)ブレるロイヤルメールの民営化
10月号 (2)民営化の評価とアメリカのドグマ
11月号 (3)「ドイツポスト」の民営化と国際化
3月号 (4)フランス、ラ・ポスト株式会社法の成立
世界の郵便局を展望する(41)~(51)

ポスタルレポーター 星野興爾

4月号 民営化反乱が閣内に及ぶ 来年夏の総選挙を控え ブラウン政権が分裂危機
5月号 民営化・DPWNの蹉跌と変貌
6月号 英国郵便の民営化が挫折 ブラウン政権存立の危機
7月号 ブライトン新会長が語る英国郵便改革と私の視点
8月号 英国郵便の民営化法案を棚上げ(英国)、ラ・ポストを公的な株式会社に(仏)
9月号 地殻変動型と地球温暖型化 世界の郵便が2つの試練に直面
10月号 郵便見直し改革では対照的な提言 英国は現状否定型、米国は現状肯定型
11月号 英国首相が郵貯銀行設立を確約 中小企業と地域活性化を柱に

12月号 郵貯銀行で稼ぐ世界の郵便会社 郵便の減収を郵貯の増収が補填
2月号 第二の郵便改革・公的郵便を護る砦
3月号 オバマ大統領が郵政民営化に“ノー”
民営化がもたらした影(1)~(12)

ジャーナリスト 東谷 暁

4月号 -かんぽの宿事件が炙り出す民営化の本質
5月号 -かんぽの宿事件は「会計スキャンダル」ではないのか
6月号 -規制緩和も規制化も利益誘導になりうる
7月号 -小泉改革の呪縛が自民党を殺す
8月号 -愚行を正す戦いはこれからが正念場
9月号 -選挙後に選挙の本当の意味を考える
10月号 -これからは厳しい2面作戦が必要だ
11月号 -改革政治は権力政治と表裏一体である
12月号 -公益企業の資金運用法を考える
1月号 -ヨーロッパ型社会民主主義の内実
2月号 -そもそも「民営化」とは何だったのか
3月号 -ネジれたままの郵政「改革」論
身近な防災講座(35)~(41)

日本防災士会常任幹事 橋本 茂

4月号 中部圏・近畿圏の内陸地震
6月号 災害と食
8月号 非常時に備えた食料の備蓄
9月号 伊勢湾台風から50年 風水害への備え
12月号 カセットコンロの使用には十分な注意を
2月号 住宅火災の犠牲をなくすために
3月号 地震防災2つのポイント
座談会
8月号 東京地方郵便局長会-事業改革委員会の業務改善への取り組み
品川南大井郵便局長・西浅草郵便局長・麻布十番郵便局長・
大田萩中三郵便局長・くらまえ橋郵便局長・下目黒郵便局長・
新宿西落合郵便局長

5月号 千葉県印旛地区会
成田吾妻郵便局長・四街道鹿渡郵便局長・印西原山郵便局長・
四街道めいわ郵便局長・成田玉造郵便局長

6月号 山形県南部地区会
萩生郵便局長・屋代郵便局長・長井粡町郵便局長

10月号 新潟県魚沼地区会
越後上田郵便局長・湯之谷郵便局長・堀之内郵便局長・
川口郵便局長
全国の郵便局を取材

地域に貢献する郵便局ネットワークの活用として、全国でさまざまに活躍されている郵便局を紹介し、郵政事業をPRすることができた。

4月号 大阪府 東大坂衣摺郵便局長
5月号 愛知県 瀬戸赤津郵便局長、春日井篠木郵便局長
7月号 山口県 須々万郵便局長
9月号 愛媛県 馬越郵便局長
9月号 新潟県 越後上田郵便局長
11月号 埼玉県 富士見鶴瀬東郵便局長
12月号 鹿児島県 西太良郵便局長、米ノ津郵便局長
1月号 北海道 名寄錦町郵便局長
2月号 石川県 金沢扇町郵便局長
3月号 石川県 能都郵便局長

以上、総務省の補完的役割をすべく多方面に活動してきました。